早速読了。
トラップ、パス、シュートといった基本的な技術は、初心者でも(大人でも)何度か蹴っているうちにそれなりに上達するが、実際にゲームをやらせてみると、周囲の動きに合わせられず、ミス連発。「今のはなんやねん?何がしたかったん?」と聞いてみると、「どこに動いたらよいのかわからない」「パスをもらっても次にどうしたらわからない」という答えが返ってくる。つまり、「これこれこういうプレーをしたい」という明確なビジョンがない。
そういうメンバーばかりでも、適当にパスを回していると偶然いい形になってゴールできることもあるが、こういう単調な、猿でもできるプレーで満足してもらっては、俺は非常に困るんだ(笑
また、このレベルのメンバーは、守備=ゴール前に集まること、と思っているフシがあるが、よく考えてみると、「これこれこういうシナリオに持って行くことで相手からボールを奪う」という意図がないという点では、攻撃の時と同じだ。これも、相手の攻めが稚拙なときは、なんとか守りきれることもあるが、ポジションチェンジ・サイドチェンジで振り回されるとあっさり崩壊する。
こういう状況をなんとかしたい、というのがこの本を取り寄せた動機だ。
「言語技術」とは、今自分が行ったプレーは、どういう意図を持って行われたかを論理的に説明する力のことを指す。ポイントは二点あって、「はっきりした意図を持ってプレーすること」と「他人にわかるよう、論理的に説明すること」。言語技術によって味方プレーヤーとのコミュニケーションを深め、連係プレーの質を高めよう、ということだ。
たとえば、13(仮に)のパスがインターセプトされ、相手ボールになってしまったとしよう。味方のミスについてはあまり突っ込まない、というのが社会人の常識だが、サッカーでは、同じミスを繰り返すのは許されない。ミスを踏み台としてプレーの質を高めていくためには、13の意図を知る必要がある。
何の考えもなく、適当にパスを回していただけなら、13は厳しく糾弾されるべきだろう。しかし、聞いてみると、こういう返事が返ってくる。
「俺がパスをもらう直前には、あのエリアはフリーなスペースになっていた。相手DFの注意が13に向けられている状況で、ダイレクトで逆サイドに素早く落としてFKを走らせれば、そのままゴール前までドルブルで進めたはず。だからパスを出した」
それに対して、FKにも意見はあり、他のプレーヤーにもやりたかったプレーがある。各プレーヤが意見を出し合うことによって、ミスを少なくし、かつ効果的に攻める作戦を理詰めで練り上げていくのが、言語技術でサッカーを変える、ということだろう。
本来は、問題となるプレーごとにその場で選手に説明させるのがよいのだろうが、レンタルコートでミニゲーム主体のフットサルでは、時間も限られているので、この方法はちょっと取り難い。動画をもとに、各自がコメントを投稿できるようなシステムを作っていこうと考えている。
本書によると、言語技術のトレーニングは、U6(6歳以下!)から行われているのだそうだ。また、S級指導者ライセンスでも、言語技術は必須のスキルだとのこと。もう、ただ漫然とボールを蹴るだけのサッカーは、終わった、のかな。